ふくろくん

コンテンツマーケティング、音楽、立ち話、そして牛乳

2016年のコンテンツマーケティングはどうなるか

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これからはこのブログでも少し真面目な話にも取り組んでいこうと思います。

 というのも、ブログでは言及してなかったのですが、本業がコンテンツマーケティングのお仕事でして、これまでのインプットをアウトプットに転換しないと勿体無いかなと思い…...

 画像のMILK JAPANの書籍は、自分が牛乳をこよなく愛しているのもありますが、素晴らしいコンテンツマーケティングの象徴ということで載せました。(本気です!)

 

本題に入る前に(注:長いです)

 このお仕事を始めてから長らく、欧米と日本でのコンテンツマーケティングに対する認識というものが大きく異なることが気になっていました。

 具体的な違いはまた今度書こうと思いますが、特に気になるのが、日本国内でこの分野に関する情報量が比較的少ないことです。主事業にしている企業すら、実践的な理論の構築や、トレンドの情報発信などが充分ではありません。

 

 メディアマーケティング(ここではwebの話に限定します)によって生まれた課題も、「炎上」というほど英語圏のソースには大きく現われることは少なかったように思いました。

 2015年は、ユーザーエクスペリエンスを無視したクリック誘導や、インフルエンサーを利用したステマバイラルメディアにおけるパクリ問題などが話題に上りました。

 直接因果関係を見出すことはできないと思いますが、コンテンツマーケティングに関わる業界内での明確なガイドラインがほぼ存在しないために、上記のような問題が起こったのではないでしょうか。 

 

 ともあれ様々な問題が表面化してきたこともあり、少しずつで貼りますが、軌道修正の流れが見えてきたかと思います。

 その中で、消費者、代理店、事業会社、メディア間のコミュニケーションのあり方を見直すことが、ビジネス活動における倫理観の向上につながると思っておりまして、今後はこのブログでたまに海外のコンテンツマーケティング事情を取り上げていきます。

 Twitterではたまに記事をシェアしていますが、もう少し噛み砕いて、深堀したかたちで残していきます。

 海外で言われていることが全部正しいというわけではありませんが、国内でこの分野・手法の定義が未だに曖昧な線引きしかできていない以上、出来る限り多様な情報から取捨選択をし、適切なコンテンツマーケティングのあり方を模索していくための手助けをしていきたいところが本心です。

 ひいてはマーケティングやメディアに携わる方々にとって役に立つ情報になればこれ幸いです。

長くてすみません...

 

2016年のコンテンツマーケティングはどうなるか 

 で、記念すべき初回ですが、Content Marketing Institute(以下:CMI)の記事「What Content Marketing Will Look Like in 2016: 40+ Predictions」に基づいて、2016年のコンテンツマーケティングについて考えてみようと思います。

 このスライドは、40人以上のコンテンツマーケティングに携わるプロフェッショナルの言葉を集めたものです。メディア人よりは、企業のマーケターの声が多めです。

パワーポイントに発言をペタッと貼っただけなので、もう少しまとめて欲しかったというのもありますが。

 記事内でもいくつかポイントをまとめてくれていますが、このエントリーでは、コンテンツマーケティングを行う立場として、自分が今後抑えておきたいと思ったポイントの以下6つを挙げようと思います。 

  1. さらに質の高いコンテンツを作り上げる
  2. 部署間の垣根を超える
  3. "ヴィジョン"の重要性が上がる
  4. 既存広告予算のカットとROIの模索
  5. オフラインへの回帰
  6. 動画を複数のコンテンツフォーマットに落とし込む

*ポイントとして取り上げた方の名前だけ記載しておくので、原文が気になる方はお手数ですがスライドをご覧下さい。

これらは基本的に海外の市場をベースにしたトピックになりますが、それぞれの点で国内で見たらどうだろうか、という自分なりの解釈を参考までにつけています。 

 

1. さらに質の高いコンテンツを作り上げる

 2014〜2015年にかけて、「どんどんコンテンツを作ろう!」という流れが(キュレーション/バイラルでは特に)顕著でした。

 また、どうコンテンツをターゲットに届けるかについても、検索、ソーシャル、ネイティヴ広告プラットフォームなど、各方面でノウハウが構築されました。

 徐々に「質の高いコンテンツを!」という声も高まってきましたが、Jay Acunzo曰く、"未だにディストリビューション、テクノロジー、分析などに重きが置かれ過ぎている"と指摘しています。これまで"ターゲットにどう届けるかが重視されてきた中で、今後はどうターゲットと共鳴(resonate)するかが問われる"とも言っています。

 また、彼は"技術や戦術はコモディティである"とし、高いクリエイティブを作り出せる才能を持った人々が強力なプレイヤーとなると考えています。

...yes, today is a great day to be a marketer, but tomorrow will be the very best of times to be a creator.

スライドで出てくるMichael Gerard、Amy Higgins、Heidi Cohenも似た言及をしています。

 日本ではすでにヨッピーさんがそのポジションを確立しているのかと思いますが、今後は彼だけでなく様々な方面でそういったクリエイターが増えてきそうです。

 企業のマーケターは、こういった才能あふれるクリエイターといかにうまく関係構築・連携できるかも、より良いコンテンツから適切にブランドメッセージを伝えるにあたって重要かと思われます。

 

2. 部署間の垣根を越える

 Robert Roseは"コンテンツを主軸にして、カスタマーエクスペリエンスを向上させていくためには、どの部署が指揮を取るべきかが企業内でより大きな課題となる"と警鐘しています。

 これは日本も抱えている同様の課題です。特に大企業においては、部署間の壁というのは顕著です。ただ、コンテンツマーケティングとは厄介なもので、ことさら企業のオウンドメディアという新たな発信チャネル(メディア)を設ける場合、広告宣伝、広報/PR、営業、さらには役員など、多くの部署・階層をまたぐこととなります。

 社内政治を巧みに調整し、コンテンツマーケティングを軸にした組織編成を指揮できる人材が必要になりますが、実行可能な人物は上層部にいる場合がほとんどでしょうか。

 

 小規模予算でコンテンツマーケティングを導入し、徐々に成果をあげて、経営層に意義を理解させようとする現場社員の奮闘も見られます。課題として、導入・運用の両面において社内調整に時間がかかり、中々フレキシブルに動くことができないまま十分な結果を残せず、「コンテンツマーケティングはうまくいかない」と頓挫に終わるケースも散見されます。

 成功のためには組織の体制すら変える必要がある、というのは不自然ではないですが、大きな企業であればあるほど、上層部の理解(もしくは啓蒙)が必要になるため、国内においても依然ハードルは高いままかもしれません。

 

3. "ビジョン"の重要性が上がる

 簡単に言うと、「ブランドマーケターは大志を抱け」でしょうか。

 コンテンツマーケティングを実践してきた企業はコンテンツの制作・ディストリビューションなど運用面でのスキル・ノウハウを蓄積してきました。

 一方で、ビジョンを掲げ運営されたメディアはどれだけあるのでしょうか。私が日本国内の事例を見た限りでは「集客のためだけにSEOコンテンツを置いた誘導用バナーまみれのオウンドメディア・更新通知にしか使われないSNS」など、それらはクライアント(自社)のための数値目標達成において貢献はしているだろうが、まったくユーザー目線に立っていない(≒ビジョンがない)メディアが少なからず見られました。

 "明確かつ意義のあるヴィジョンがない限り、野心・独自性・高い影響力を持ったコンテンツは作れない"というのが、Collen Jonesの主張になり、数値達成の先にある本来の目的を見直した強い意義を持ったメディア運営が成功に一歩近づける秘訣ではないかと思います。

 そして、直接的ではないにせよ何がしかの社会的意義を持ったメディア運営をするにあたって、社会に対する責任というのも忘れずに念頭に置いておきたいです。

ウェブライターは何者かになれるのか(朽木誠一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース

“メディア側にお願いしたいのは、社会に対して責任を負う覚悟がないままメディアの運営をはじめないことであり、はじめた以上は、その責任を最後まで全うしてほしいということ”


4.既存広告予算のカットとROIの模索

 Micahel Brennerは大規模な広告予算のカットを予測しており、その分コンテンツマーケティングに投下される予算が増加すると見込んでいます。しかし、企業としてはそのROIをしっかり測っていきたいところです。

 バーグハンバーグバーグさんが得意とするプロモーションとしての記事やサイトなら短期的効果が見込めてよいのですが、コンテンツマーケティングでは長期的なメディア運用を行うこともあり、運営・実行者側がどのような効果を打ち出せるかが肝要です。

 前項に技術的な側面ばかりに偏ってはいけないと書いていますが、縦割り組織の中で、PVやCPAに代わる新たな指標群や考え方をもって、効果をいかにわかりやすく納得させたい相手に伝えることができるか、模索と議論がより深まっていきそうです。

 "コンテンツの質の向上により、ネイティブアドとリタゲーティング広告とのレバレッジを図ることは不可能ではない"という見方もあり(Cas Mccullough)、それを達成することができたケースの分析が進めば、消費者にとって有意義なメディア・コンテンツを新たに作る大きなメリットを見出せるでしょう。

 

  • しかし、PV論争はまだしばらく続きそうです。

 

5. オフラインへの回帰

 メディアの乱立の中で、動画の増加=コンテンツフォーマットの増加によって、消費者へのさらなる”デジタルオーバーロードが見込まれます。そのため、書籍やリアルイベントなど、ネットから離れる手法がもう一度重視されていくかもしれません。(Jeff Rohs)

(推測ですが、リトルプレス、移住、ミニマリズムの盛り上がりも、その兆候ではないでしょうか)

 特に小売企業にとっては、店頭が現場であり、サービスの要となる場所です。店内にいる消費者にとって、スタッフの顧客対応、商品陳列の利便性、在庫確保などは依然重要な評価軸でもあります。加えて、POP、チラシ、ポスター、フリーペーパーをはじめとする紙モノ、イベント施策も、顧客とのコミュニケーション・ボンドの構築に欠かせないでしょう。

 見逃してはいけないのが、現代の消費者はモバイルユーザーでもあること。参加/鑑賞の価値があるイベント、シェアしたくなるクリエイティブ、キャンペーンのQRコードなどを通してオフライン→オンラインへ誘導する機会を増やすことも可能です。

 ここ数年、オムニチャネル、O2Oなどの動きは盛んになっていますが、コンテンツマーケティングの文脈から強力な何かを打ち出せるのかは気になります。

 

 新たなプラットフォームの模索という意味でも少し関連してくるかもしれません。オンライン/オフラインの両面を加味して、目的に沿ったプラットフォーム、フォーマットを取捨選択しコンテンツを作っていくことを念頭に置いておきたいところです。

 オフラインという観点で、「リアルのコミュニティの場を作る」ことによって成功しているのが「書店」かもしれません。B&B、天狼院書店、6次元といったコミュニティ重視のイベントを行う書店のやり方は参考になる部分が多いかと思います。

 しかし、Heidi Cohenは"ブログが依然コンテンツフォーマットとして一強である"と唱えています。(おそらくwebのみですが、実質そうかもしれません)

 主観になりますが、
FacebookのInstant Articleでの取り組みに見られるような、集客のハブとしてのオウンドメディアではなく、様々なプラットフォームにフォーマットを合わせたコンテンツを切り売りすること。

②またはその逆で、適切かつ効果的なネイティブアドを掲載できるメディアに育てることが、数多くの競合の中で今後生き残れるかどうかが変わってくると思います。その状態まで持っていくのが一番大変なんですが!

 

 

6. 動画を複数のコンテンツフォーマットに落とし込む

「動画の時代だ!」

 2015年、これは本当にずっと言われていたと思います。

 Jay Baerのスライドを読むと、「動画があればなんでもできる」と言わんばかりですが、動画があれば、文字、写真、音声を抽出して再編集できるため、最も効率的なコンテンツ生成法であるとしています。逆はできませんしね。

 また、Facebook Live、TwitterではPeriscopeとツイキャス、Meerkatなど、モバイルライブストリーミングも選択肢が増えており、上記のようなコンテンツ作りをメインとする(おそらく10〜20代の)ユーザーも多くなりそうです。

 先のトピック「オフラインへの回帰」も含めて、ライブ配信・録画からスピーディーに編集されたコンテンツを様々なメディアやチャネルに落とし込めるので、ターゲットへのアプローチ手段が拡充されますね。

 

終わりに 

はい、そんなわけで色々なトピックを織り交ぜました、

「こんなん常識だろ!」と言いたくなる部分もあるかと思いますが、海の向こうではそんな話が進んでいるようです。

今回はCMIだけからの情報ですし、ここに載せられなかったトピックもたくさんあるんですが、日々記事を書きながらアップデートしていきたいと思います。

後で書きたいトピック

【年末緊急掲載】広告であることを明確にせよ!、FTCが年末に発表した綱領で目指すもの - 一歩先を行くデジタルマーケティング:ITproマーケティング

 

*これをまとめている時にもまた別のところから似たような記事が!これも後で追記しておこうと思います。

20 Experts Provide Their Content Marketing Predictions For 2016

marketinginsidergroup.com

 

では!